因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

「すみません。楓子さん、新しくこの家に入る人にはいつも厳しくて」

 あいさつ回りの途中、日あたりのよい母屋の廊下を歩きながら、伊織さんが申し訳なさそうに謝った。

「私は大丈夫ですよ。身分違いの家に嫁いでしまった自覚はあるので、すぐに認めてもらえなくても仕方ないです」
「和華さんは強いですね。さすが、醍醐先生が選んだお人だ」
「……いえ」

 私は決して、そんなポジティブな理由で選ばれたわけではない。

 むしろ、彼から選択肢を奪った張本人だ。

 だからこそ、彼との結婚生活をできるだけ楽しく、豊かにしていきたいと思う。

 楓子さんの理不尽な態度は引っかかるけれど、いちいち気に病んでいたら身が持たない。

「和華」

 その時、背後から光圀さんの低い声が私を呼んだ。振り向くと、着物に袴姿の彼がゆったりこちらに歩いてくる。

 今日になってから顔を合わせるのは初めてなので、窓から差し込む陽の光に目を細める彼を見ただけで、どきりと胸が跳ねた。

 和服姿の光圀さんは、なにをしていても趣がある。

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