因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました
ふたりともかなり驚いていたが、その一方で妙に納得していた。
『なるほど。その頃から旦那様のことが気になっていて、だからとっさにかばったのね。和華たちの方が、私たちよりよっぽど素敵な歴史があるじゃないの』
『そう……なのかな?』
そう言われると、そんな気もした。子どもの頃から光圀さんがお店に来てくれると嬉しくて、つい馴れ馴れしく話しかけたりしちゃっていたから。
『そうだよ。こんな立派な家に住んでる男に傷つけられたら、慰謝料ふんだくろうと思うのが普通じゃん。一式は、無意識に香道家先生に惹かれてたんだよ』
『兵吾……せっかく運命的なエピソードに感動してるんだから、水差さないで』
ふたりの会話にクスクス笑っていたあの時、徹志はまだ首も座らない赤ちゃんだった。
なのにもう三歳だなんて、時が流れるのは本当に早いな。
「おーい、徹志くん、目を開けてくれ~」
兵吾くんに言われて横を見ると、徹志はなぜか神妙な顔で目を閉じ、短い脚で胡坐をかいている。
その不可解な行動に、思わず徹志の肩をトントンと叩いた。
「徹志、お写真の時は目を開けないとダメだよ。足もちゃんと揃えて」
「えー、これ、かっこいいのに」
「なにかの真似?」
「うん! とうたまのだでん!」