因縁の御曹司と政略結婚したら、剝き出しの愛を刻まれました

 離れにいる伊織さんを呼ぶため、光圀さんは土間に下り、勝手口に手をかける。

 その時、昼間見た太助くんの姿がふと脳裏に浮かんだ。私はとっさに光圀さんの背中を呼び止める。

「そういえば、太助くんはお出かけですか?」
「ああ、人と会う用事があると。帰りも遅いそうだから、残念だが一緒に食事はできそうにないな」

 光圀さんはそう言って、勝手口の向こうへ消えた。

 太助くん、やっぱり空木先生と会っていたのかな。干渉しないと決めたはずなのに、どうしても心に引っかかりを覚える。

 光圀さんと同じ香道家とはいえ、空木先生は別の流派の家元。そんな彼女と親しくするのは、単なる好意だろうか。

 太助くんはいつも光圀さんに反抗的だし、まさか空木流に入門したいなんて思っていないよね?

 私は口を出せる立場ではないけれど、なんとなく胸がざわめいた。


 食事の準備が整うと、楓子さんを筆頭にした五人の家政婦、そして伊織さんとともに、ささやかな宴が始まった。

 元々光圀さんが用意してくれていたチキンとケーキのほか、伊織さんがピザやローストビーフ、パスタ、シーザーサラダなどを急いでテイクアウトしてきてくれたので、テーブルの上は華やかだ。

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