没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
オデットは顔から火を噴きそうなほど真っ赤になってもじもじと恥じらい、ジェラールが愛しげに見つめている。

仲睦まじいふたりの様子に、オデットの両親はアタフタし始めた。

「そ、そうだ。急いであれを、ああしないといけなかったんだ。なぁお前?」

「そうね。それを、そうしないといけなかったんだわ。殿下のお見送りはオデットに任せましょう」

「おねえたん、ちゅかまえ――」

「リュカはお父さんとあっちで遊ぼうな」

ノーマンも気を利かせて玄関ホールからそっと離れたので、オデットとジェラールのふたりきりになる。

「オデット、顔を上げて」

「あ、あの、恥ずかしくて……あっ」

顎をすくわれて唇を奪われた。

深くオデットを味わったジェラールは、愛しい恋人の頭を撫でてから玄関ドアを開けて出ていく。

「王都で待っているよ」

玄関の外では護衛の騎士が二頭の馬とともにジェラールを待っていた。

ひらりと鞍に跨ったふたりは馬を飛ばし、その姿はすぐに見えなくなった。

到着して一時間足らずの滞在で、また遠路を駆けるとは体力的に厳しいだろう。

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