没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
ガレの今の居所はわからない。
レオポルドが亡くなって間もなく、彼は王城勤めを辞めている。
『他の主に仕える気はない』と言って去ったそうだ。
ガレを探し出そうということなのだろうが、オデットに心当たりはない。
「ガレさん。私は聞いたことのないお名前です。今は五十五歳ですよね。髪や目の色は珍しくないですし、手の甲のほくろは知り合いなら思い当たるかもしれませんけど……あれ?」
その特徴を持つ人物を知っている気がして、オデットは目を瞬かせた。
ジェラールがフッと笑み、馬の歩調を緩める。
「ガレにはもうひとつ特徴がある。『他の主に仕える気はない』と言ったそうだが、つまり、俺の父上への奉公を拒否したということだ。きっと伯父上が弟に追い詰められたと思っているのだろう。その息子である俺に会ったら、ガレはどんな反応をすると思う?」
「うーん……当時生まれてもいなかった殿下を恨むのは筋違いだと思いますけど、好きにはなれないと思います。笑顔でご挨拶したり、愛想よくお話ししたりはできないかも――」
そこまで話して、オデットの脳裏にはひとりの男性の顔が浮かんだ。
「あっ!」
レオポルドが亡くなって間もなく、彼は王城勤めを辞めている。
『他の主に仕える気はない』と言って去ったそうだ。
ガレを探し出そうということなのだろうが、オデットに心当たりはない。
「ガレさん。私は聞いたことのないお名前です。今は五十五歳ですよね。髪や目の色は珍しくないですし、手の甲のほくろは知り合いなら思い当たるかもしれませんけど……あれ?」
その特徴を持つ人物を知っている気がして、オデットは目を瞬かせた。
ジェラールがフッと笑み、馬の歩調を緩める。
「ガレにはもうひとつ特徴がある。『他の主に仕える気はない』と言ったそうだが、つまり、俺の父上への奉公を拒否したということだ。きっと伯父上が弟に追い詰められたと思っているのだろう。その息子である俺に会ったら、ガレはどんな反応をすると思う?」
「うーん……当時生まれてもいなかった殿下を恨むのは筋違いだと思いますけど、好きにはなれないと思います。笑顔でご挨拶したり、愛想よくお話ししたりはできないかも――」
そこまで話して、オデットの脳裏にはひとりの男性の顔が浮かんだ。
「あっ!」