没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
(たしか国王陛下は、遺書はなかったと仰っていたわよね。殿下はどうしてガレさんが隠し持っていると思ったのかしら?)
ジェラールがニヤリと口の端を上げたら、ガレが嘆息する。
「レオポルド様は遺書を残されておりません。王太子殿下は私の正体を見破ったと仰いたいようですが、身元を偽ったことはございません」
「ああ、そうだろう。伯父上亡き後、あなたは王都を出てレオポルド派の屋敷を転々とした。伯父上に仕えていた従僕だと言えば、喜んで雇ってもらえただろうから。父上への反意を覚える者同士、政権への不満を言い合いながら気持ちよく仕事をしていたんじゃないか?」
皮肉めいた言い方に、ガレの眉間に皺が寄る。
遺書を渡してほしいなら腰を低くしてお願いすべきなのにとオデットは考えるが、ジェラールはガレを不快にさせても一向に構わず話を進める。
「たしか、グスマン伯爵に鞍替えしたのは十年ほど前だと言っていたね」
「鞍替えではございません。できることならレオポルド様への想いを同じにする主人に仕えたいと思っていました。ですが――」
ジェラールがニヤリと口の端を上げたら、ガレが嘆息する。
「レオポルド様は遺書を残されておりません。王太子殿下は私の正体を見破ったと仰いたいようですが、身元を偽ったことはございません」
「ああ、そうだろう。伯父上亡き後、あなたは王都を出てレオポルド派の屋敷を転々とした。伯父上に仕えていた従僕だと言えば、喜んで雇ってもらえただろうから。父上への反意を覚える者同士、政権への不満を言い合いながら気持ちよく仕事をしていたんじゃないか?」
皮肉めいた言い方に、ガレの眉間に皺が寄る。
遺書を渡してほしいなら腰を低くしてお願いすべきなのにとオデットは考えるが、ジェラールはガレを不快にさせても一向に構わず話を進める。
「たしか、グスマン伯爵に鞍替えしたのは十年ほど前だと言っていたね」
「鞍替えではございません。できることならレオポルド様への想いを同じにする主人に仕えたいと思っていました。ですが――」