没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
若かったその頃は、頭脳を生かして活躍したいと思っていたそうだ。

しかし与えられる仕事は期待と違っていた。

初めに仕えたのは先代国王の弟で、身の回りの世話や執事に指示されての雑用ばかり。

仕事への意欲を失いかけていた時に、配置換えがあってレオポルドに仕えることとなった。

レオポルドはそれまでの主君と違い、ガレ本人の能力を評価してスケジュール管理や書類整理、政務の相談までしてくれた。

仕事への情熱を取り戻したガレであったが、近侍には出しゃばるなと疎まれた。

嫌がらせをする近侍を諭して守ってくれたのもレオポルドであったという。

「レオポルド様が王位に就かれるのを切望していたのです。国王となられたレオポルド様に仕えるのが私の夢でした。それが――」

ガレが目に涙を浮かべ、ジェラールを睨む。

「あなた様のお父上、ガブリエル様が私から夢と希望を奪ったのです。兄を死に追いやったと後悔し、懺悔の日々を送ることがせめてもの償いではございませんか!」

オデットは悲しい気持ちでガレを見つめる。

(ガレさんは悔しかったのよね。国王陛下を恨まないと生きられないほど……)

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