没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
まさに青天の霹靂で、ジェラールが承知できるはずはない。

「私の心はもう決まっているのです。オデット以外の女性と結婚する気はありませんので、父上も母上もそのおつもりでいてください」

ジェラールが怒りを隠せない声で言うと、王妃がカトラリーを置いて立ち上がった。

「わたくし、今晩は食欲がありませんの。お先に休ませていただきます」

逃げるように晩餐室を出ていった母親に、ジェラールは嘆息する。

生まれた時から教育係が複数人ついて育ったジェラールは、一般的な家庭のような親密な母子関係は築いていない。

けれども仲が悪いわけではないので、母として息子に味方してあげたい気持ちはきっとあるだろう。

それと同じくらいに夫に逆らわず平穏に暮らしたいという願いもあり、王妃はふたつの思いの狭間で苦しくなったのではないだろうか。

(母上には申し訳ないが、俺が折れるわけにいかないんだ)

今日のティータイム時のオデットは、純粋な笑みを浮かべて聖女に会ってみたいと話していた。

こんな大事になっていると知ればあの笑顔が消えてしまうと、ジェラールは焦燥感に駆られる。

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