没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
(俺の父親はこんなことを言う人間だったのか……?)

対して国王は不気味にも思えるほどの笑みを浮かべて急に張り切る。

「聖女サラの癒しの力は絶大だ。歳は二十でお前との年齢差もちょうどいい。心が洗われるような清廉な美女でもあったぞ。お前も会えばきっと気に入る。なにも問題はない」

「私は容姿に惑わされません。オデットほど可愛い女性がこの世にいるとも思えません。それに十日後にはオデットをお披露目するための晩餐会が開かれます。直前での中止は、それこそ王家の威信に関わるのではありませんか?」

「招待状には目的を書いていないだろう。ならば聖女降臨を祝うための晩餐会にすればよい。聖女を招くつもりで、すでにインペラ宰相には話している」

目的を変えるとは、なにを言い出すのか。

「父上!」

ジェラールが拳をテーブルに叩きつけると、国王がスッと笑みを消した。

「お前は聖女を娶れ。これは国王命令だ。ついては明日、聖女に引き合わせるゆえ外での公務は中止し――」

話の途中だが、ジェラールはたまらず席を立って晩餐室を出た。

(誰が会うか)

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