没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
腹立たしさを抱え、長い廊下を執務室に向けて歩いていると、会いたくない者とばったり鉢合わせてしまった。

インペラ宰相だ。

国王の右腕の彼には王城内に専用の執務室が用意されていて、議会開催の繁忙期には泊まることもある。

けれども今は特に急ぎの政務はないはずで、なぜこんな遅くまで城内にいるのかとジェラールは眉を寄せた。

「殿下、ごきげんよう。おや? ご機嫌は悪いようですな。晩餐のメニューに嫌いな食材でも使われていましたか?」

そんな子供じみた理由で不機嫌になったことはないと、ジェラールはますます眉間の皺を深める。

相手は古参の重鎮で有力貴族。

表面上はいい関係を築くべきだと理解していても、今はどうにも怒りを隠せない。

「父上が聖女を王太子妃にしろと言い出しました。王城晩餐会に聖女を招く話を宰相ともしていると。此度の横暴な国王命令はまさか、あなたの入れ知恵ですか?」

王太子であるジェラールに責められたら他の者なら焦るであろうが、インペラ宰相は肩を揺らして笑った。

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