没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
それが誰かにオデットが気づくと同時に、店内からルネに呼ばれる。

「ちょっとだけ見えてるそのカチューシャはオデットね? 早く早く。店に入って」

「うん、でもどうやって入ればいいのか……」

「ちょっとあんたたち、邪魔よ。客じゃない人は帰って。営業妨害!」

ルネに追い払われて見物人は半分に減り、オデットはなんとか店内に戻ることができた。

「ブルノさん、ただいま帰りました」

四人の客がこちらに背を向けて立ち、カウンター内にいるブルノと向かい合っている。

この国では初めて見る真っ黒な長い髪の女性と、王城騎士の青年ふたりだ。

広くはない店内なので、オデットのすぐ目の前に騎士の背中があった。

振り返った騎士が怪しい者を見るような厳しい視線を向けるので、オデットは首をすくめる。

「わ、私は従業員です。いらっしゃいませ……」

するとルネに横から腕を引っ張られ、つまずくようにテーブル側に移動した。

「オデット、聖女様がいらっしゃったのよ。あんたに会いに来たんだって。すごいじゃない!」

「私に?」

オデットが驚くと、聖女サラがゆっくりと振り向きこちらに歩み寄った。

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