没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「ええと、あっちの方だったかな……?」
嘘をつきなれていないオデットが困り顔で適当な方角を指さしたら、その指をロイがぎゅっと握った。
「オデットはそんな姑息な手段に引っ掛かったりしないよね」
「姑息?」
高価な贈り物で女性の気を引くのは卑怯だと主張するロイを、ルネがからかう。
「悔しいからってなに言ってるのよ。女はねジュエリーを贈られたらときめくものなのよ。オデットにやっと恋人ができそうで嬉しいわ。私の彼の話も聞いてね。女ふたりで恋バナに花を咲かせようね」
「お子様は放っといて」と付け足したルネにロイが怒り出して、店内がまた騒がしくなる。
(私が王太子殿下の恋人に? まるでおとぎ話ね。お忙しいでしょうし、きっともう来てくれないわ)
王城の方角に視線を向けたオデットは、返せなかったダイヤモンドをブラウスの襟の内側にしまい、ほんの少し寂しい気持ちになっていた。
それから三日が過ぎた夕暮れ時。
ブルノは外出中で店を任されたオデットは、カウンターに向かって十倍ルーペを覗いている。
手袋をはめた手には買い取り希望で持ち込まれた銀製のデザートスプーンがある。
嘘をつきなれていないオデットが困り顔で適当な方角を指さしたら、その指をロイがぎゅっと握った。
「オデットはそんな姑息な手段に引っ掛かったりしないよね」
「姑息?」
高価な贈り物で女性の気を引くのは卑怯だと主張するロイを、ルネがからかう。
「悔しいからってなに言ってるのよ。女はねジュエリーを贈られたらときめくものなのよ。オデットにやっと恋人ができそうで嬉しいわ。私の彼の話も聞いてね。女ふたりで恋バナに花を咲かせようね」
「お子様は放っといて」と付け足したルネにロイが怒り出して、店内がまた騒がしくなる。
(私が王太子殿下の恋人に? まるでおとぎ話ね。お忙しいでしょうし、きっともう来てくれないわ)
王城の方角に視線を向けたオデットは、返せなかったダイヤモンドをブラウスの襟の内側にしまい、ほんの少し寂しい気持ちになっていた。
それから三日が過ぎた夕暮れ時。
ブルノは外出中で店を任されたオデットは、カウンターに向かって十倍ルーペを覗いている。
手袋をはめた手には買い取り希望で持ち込まれた銀製のデザートスプーンがある。