没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
アランが誕生日プレゼントを贈りたい相手は、モンテス商会経営者の孫娘。

冷たく厳しい家人の中で、唯一アランに優しくしてくれる天使のごとき清らかな女性だという。

年齢はアランのひとつ上の十六歳で、そろそろ結婚相手を探そうかという年頃だろう。

もし貴族なら初恋のお嬢様に求婚できるかもしれないと、夢が膨らんでいるようだ。

(なんとか調べてあげたいけど、私にできるのは宝石を見ることくらいで、どうすればいいのか)

眉尻を下げたオデットの右手に、ジェラールの左手がかぶせられた。

鼓動を弾ませて隣を見ると琥珀色の瞳が力強く輝き、任せろと言うかのように彼が頷く。

ポケットから黒革の財布を取り出した彼は、十万ゼニーの札束をアランの前にポンと置いた。

「このスプーンは俺が買い取ろう。その代わり、君の出自を調べさせてくれ」

「えっ!?」

アランの驚きには査定額の二十倍での買い取りと母親探し、それから『従業員じゃなかったの?』という気持ちが混ざっているようだ。

オデットも目を丸くしたが、少年を助けようとしてくれるジェラールを頼もしく感じて頬を綻ばせた。

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