没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
「閉店時間です」

夕日はかなり西に傾いて、あと三十分もすればランプが必要になるだろう。

ジェラールが残念そうに立ち上がる。

「そろそろ帰らなければ。アランくんの母親探しの件はまず俺からグスマン伯爵に連絡を取る。訪問する際にはオデットに同行してもらいたいんだが、店を抜けられる?」

「ブルノさんに聞いてみます。事情を話せばきっといいと言ってくれると思います。人情味のある方ですので」

微笑んで頷いたジェラールだったが、差し込む夕日に目を遣ると急に眉を寄せた。

「ブルノさんは何時に帰るんだ?」

「今日はリバルベスタ教会のバロ司教に会いにいっているんです。ふたりはお友達でよく酒場に行くんですよ。きっと今夜もそうです。帰るのは日付が変わる頃でしょうか」

眉間の皺を深めたジェラールが信じられないと言いたげにかぶりを振った。

「たびたび夜間にオデットをひとりにしているのか。なにかあったらどうする」

「大丈夫ですよ。この辺りは治安がいいですし、強盗に入られたこともないそうです」

「過去になくても、この先はわからないだろ。ブルノさんが戻るまでここにいよう」

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