没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
腰に片手をあててドア口に立ったロイは、ジェラールを指さして声を荒げる。

「やっぱりいやがったな!」

「やっぱりってどういうこと?」

オデットがキョトンとすれば、ロイが鼻の付け根に皺を寄せた。

「さっきおじいちゃんがうちに寄ったんだ。今夜は飲みにいくって言うから、心配になって来てみれば思った通りだ。おい、ジェイとかいう怪しい奴、オデットに手を出したらただじゃおかないぞ」

「ロイったら、なに言ってるのよ」

王太子に対する失礼発言にオデットは慌てたが、当のジェラールは余裕たっぷりに鼻で笑うと口の端を上げた。

「ただじゃおかないのか。それは興味がある。子供の君がどうやって俺にお仕置きするのか見せてもらおう」

「えっ?」

カウンターの内側から手首を掴まれて引っ張られたオデットは、体勢を崩して「キャッ」と声をあげた。

カウンターに片手をついたら大きな手が重なり、ジェラールが身を乗り出すようにしてオデットの額に口づける。

オデットの目の前には男らしい喉仏があって驚いて息を吸い込めば、ほのかに龍涎香の甘い香りがした。

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