没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
ベーコンとマッシュルームのオムレツと、野菜のシチュー、コロンベーカリーのバゲットにはチーズをのせて焼こうと、オデットはのんきに考える。

楽しい夕食になりそうだと口元には笑みが浮かび、鼻歌交じりにキッチン兼自室のドアを開けたのだった。



アランが来店してから十日が経った午後、オデットはルネと自室にいる。

仕事着のまま外出しようとしたらルネに止められ着替えたところなのだが、黄色い無地のワンピースに難色を示される。

「もう少しいい服はないの?」

持っている服の中で、このワンピースが一番上等である。

返事の代わりに簡素な木目のキャビネットを開けて見せたら、ルネに憐みの視線を向けられた。

「私の一張羅を貸してあげる。ピンクのデイドレスで襟に大きなリボンがついているのよ」

「ありがとう。でもルネのドレスはサイズが合わないと思うの」

ふたりの身長差は十センチほどあるので、ルネの服をオデットが着たら半袖は七分丈に、裾は床につきそうな気がする。

「それに、そこまでおめかししなくていいと思うんだけど」

キャビネットの扉を閉めつつ言えば、ルネに叱られる。

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