没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
オデットがもらったネックレスも目の玉が飛び出そうな価格だが、彼のブローチは富の象徴のような大きさと煌めきを誇っている。

それまでのおどおどした雰囲気はどこへやら、たちまちオデットの目が輝いた。

(すごいわ! 世界最大のダイヤモンドの原石〝カナリン〟から切り出された三百十七カラットの〝セカンドスターオブアフリカ〟くらいありそうね)

それは前世の話だが、この世界にもこれほどまでに大きなダイヤモンドが存在するのかとオデットは嬉しい興奮に包まれた。

「そのブローチを私に――」

湧き上がる鑑定欲に突き動かされたが、唇に人差し指をあてられて言えずに終わった。

「ゆっくり見せてあげたいけど後でね。時間がない。まずはこの店に入ろう」

「え?」

さりげなく腰に腕を回され、目の前の衣料品店にいざなわれる。

格式高い雰囲気を醸す店のドアには、ロイヤルワラントを証明する盾がガラス越しに飾られていた。

中に入ると店主とおぼしき壮年の男性と五人の従業員たちが、ビシッと整列して頭を下げる。

「王太子殿下、ようこそお越しくださいました」
戸惑うオデットの隣ではジェラールが慣れた様子で注文する。
< 56 / 316 >

この作品をシェア

pagetop