没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
けれども体調不良という話は素直に信じて、斜め上の心配をする。

(きっとお腹を下しているんじゃないかしら。そういう時って客人に早く帰ってもらいたいわよね。わかるわ。私も接客中にあったから)

これ以上追及できなくなったジェラールは息をついて立ち上がると、作り笑顔を伯爵に向ける。

「どうぞお大事に。今日はこれで失礼します」

伯爵夫妻に見送られ、玄関を出て馬車に乗る。

「なにもわかりませんでしたね。アランさんはきっと期待して待っていますよね」

母親にたどり着けなかったと報告するのが心苦しい。

オデットは眉尻を下げたけれど隣に座るジェラールに残念そうな雰囲気はなく、ニッと口の端を上げた。

「止めてくれ」

彼がひと声かけると、伯爵邸の角を曲がったところで馬車が停車した。

目を瞬かせるオデットに彼は降りるよう指示する。

「歩いて戻るよ」

「お忘れ物ですか?」

「そうじゃない。グスマン伯爵は明らかになにかを隠していた。知らないという言葉を鵜呑みにしてはならない。スプーンについては他にも調べる手段はある」

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