没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
そのように説明されてもピンと来ていないオデットだったが、まだ諦めなくていいのだと笑みを取り戻した。

馬車を道の端で待たせ、ジェラールについて伯爵邸に戻る。

ドアノッカーを鳴らせば対応に顔を出したのは執事で、ジェラールを見た途端に不遜にも眉を寄せた。

ただし表情以外は執事らしく丁寧である。

「旦那様を呼んで参りますので先ほどのお部屋でお待ちください」

「いや、グスマン伯爵もご夫人も呼ばないでもらいたい。あなたに用がある」

「私、ですか?」

怪訝そうに見られたが相手が王太子では嫌とは言えないようで、玄関横の部屋に通してくれた。

先ほどの応接室よりかなり狭く、正方形のテーブルに布張り椅子が二脚向かい合わせに置かれているだけで装飾性が低い。

他家の従者や使用人、配達人などを待たせておくための部屋だろう。

オデットはもちろん、ジェラールも不満は言わずに勧められた椅子に座り、用件を伝える。

「銀食器の管理簿を見せてもらいたい。十六年以上前のものを持ってきてほしい」

貴族ならばどの家でも銀食器の管理簿をつけている。

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