没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
買う気はないと言いつつも、展示されているもの以外にも銀のスプーンはあるかと在庫を確認されて不思議に思ったのをオデットは思い出した。

子爵夫人には王都は初めてと話している様子だったのに、オデットには『この近くにモンテス商会があったと思うんですけど、まだありますか?』と行ったことがあるかのような聞き方をしたのも疑問だった。

それをジェラールに教えると、「よく思い出してくれた」と彼の瞳が弧を描いた。

テーブル越しに頭をポンポンと優しく叩かれてオデットは頬を染める。

(なぜかしら。殿下に褒められると、すごく嬉しくて照れくさい……)

それからふたりは不愛想な執事にお礼を言ってグスマン伯爵邸を出ると、待たせていた馬車に乗ってメインストリートまで戻ってきた。

西の空が薄っすらと赤みを帯びている。

馬車が停車してからオデットは、この後どうすればいいのかとジェラールに尋ねた。

「すぐにアランさんに報告しますか?」

「いや、その前に母親に接触しようと思う。それは俺に任せて。ブラウン子爵を通して話をつけるから」

「わかりました」

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