没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
アランを母親に会わせてあげられそうだとホッと笑みを浮かべたオデットだが、急に心配になって顔を曇らせる。

「どうした?」

「あの……」

シュルビアがアランの存在を否定するようなことを言ったらどうしようと心配していた。

捨てた我が子に会いたいと思っていないかもしれないと。

母子の再会がアランを傷つけるだけに終わるなら、見つけ出さない方がよかったと後悔するだけだ。

それを話せば、ジェラールがオデットの肩を抱き寄せた。

たちまち鼓動を高鳴らせる中で、耳元に響きのよい声を聞く。

「アランの心配をしているのか。オデットは優しいな。きっと大丈夫だよ。母親も会いたがっているはずだ」

オデットはスプーンのルビーから母親の気持ちを読み取っている。

幸せになってほしいという切実な感情を。

本当は自分で育てたかったのに他人に託さねばならなかった深い事情があるはずだとジェラールはオデットに話した。

「その事情に予想はついているんだが」

「えっ、どんな事情ですか?」

「後々わかるよ。すまないが時間切れだ。城に戻らないと」

ジェラールはごく自然にオデットの額に口づけた。

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