没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
ジェラールはシュルビアが子供を手放さなければならなかった理由まですべてわかっている様子だが、オデットには『ついておいで』としか言ってくれなかった。

角を挟んだ隣に座るシュルビアを見れば、スカート生地を両手で強く握りしめている。

緊張に加え、なにかつらい思いに耐えているように見えた。

この場にはオデットたち三人の他に、グスマン伯爵夫人しかいない。

約束は十五時だが、ジェラールに早めに行こうと言われて三十分前に到着したため、外出中だという伯爵はまだ帰宅していなかった。

ティータイム時なので、目の前には紅茶と数種類のティーフーズが並んでいる。

到着してからずっと伯爵夫人がぎこちない笑みを浮かべて話し続けている。

「シュルビア、本当に久しぶりね。元気そうでよかったわ。突然いなくなって心配したのよ」

「あの時は、その……大変申し訳ございませんでした」

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