没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~
グスマン伯爵は観念したようなため息を漏らし、その後は気まずそうに妻の様子を横目で窺っていた。

応接室に重たい沈黙が下りる。

皆の気持ちが落ち着くのを待っているのかと思ったが、柱時計を見たジェラールがオデットの真後ろに移動して頭に手を置いた。

オデットが首を後ろに倒すようにして彼を見れば、クスリと笑って瞳を弓なりにする。

「そろそろだと思うよ」

「え?」

その直後に応接室のドアがノックされ、執事が顔を覗かせた。

「失礼いたします。王太子殿下のお使いだという少年が来ていますがどうなさいますか?」

少年と聞いてオデットはハッとした。

(時間をずらしてアランさんを呼んでいたのね?)

シュルビアが伯爵の夜の相手をさせられていたという告白は、子供に聞かせたくないだろう。

その話が終わったタイミングで呼び寄せたジェラールに、オデットは感心した。

「ここに通してください」

ジェラールの許可をもらった執事は一度退室し、すぐにアランを連れて戻ってきた。

今日も作業着姿のアランがおずおずと入室する。

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