エリート警察官は彼女を逃がさない
「美緒」
また表情が曇っていたのか咲良がたしなめる様に私を呼ぶ。
「まだ何も始まってない。ただ声をかけられて連絡するって言われたけどそのままってだけ」
相手を詳しく話すわけにはいかないが、要約すればそれだけのことだ。
「うそ、美緒がナンパされて連絡先を教えるとかありえない。そんなに素敵な人だったんだ」
素敵な人。その言葉にドクっと胸が高鳴る。本当の私を知っても肯定してくれた。
そこまで考えて私はフルフルと頭を振った。あれはただのリップサービスだ。本人目の前にして「女性らしい人がタイプ」そんなこと言えるわけがない。
「もういいの。忘れることにする」
始まってもいないのだから、これ以上考えなければいい。そう思った。