◇水嶺のフィラメント◇
「──此処にいる間、一切時間は進まない。でも……レインとあたしだけは動くことが出来るの。だからあたしが此処へ踏み入ったことで時が止まったのを合図に、彼はいつもあたしに会いに来てくれた。だけどレインに万が一何かが……起きていたとしたら。あたしが此処にいるのに彼がこのまま来ないとしたら……」
「アン……」
レインとアンしか動けない時の随。
アンが此処にいると分かれば、レインは直ちに合流しようと試みるだろう。
なのにレインが現れないとなれば……彼の身に不穏な事態が起きたとみるしかない。
現にこの空間に入って既に十五分は過ぎた筈だ。
しかし愕然としたメティアの向こうに立ちはだかる壁は、一向に動く気配を見せなかった。
そしてよしんばそのような状況にあるのであれば──アンが外へ出た途端、その状況は進行する──それはきっと、好転よりも悪化を示唆しているものと思われた。
目の前でうな垂れる王女の様子に、メティアは掛けてやれる言葉も見つからないまま時を止めた。
アンはきっと、時間さえ止めればレインを助けられるものと、その一心でこの洞窟に足を踏み入れたに違いない。
「アン……」
レインとアンしか動けない時の随。
アンが此処にいると分かれば、レインは直ちに合流しようと試みるだろう。
なのにレインが現れないとなれば……彼の身に不穏な事態が起きたとみるしかない。
現にこの空間に入って既に十五分は過ぎた筈だ。
しかし愕然としたメティアの向こうに立ちはだかる壁は、一向に動く気配を見せなかった。
そしてよしんばそのような状況にあるのであれば──アンが外へ出た途端、その状況は進行する──それはきっと、好転よりも悪化を示唆しているものと思われた。
目の前でうな垂れる王女の様子に、メティアは掛けてやれる言葉も見つからないまま時を止めた。
アンはきっと、時間さえ止めればレインを助けられるものと、その一心でこの洞窟に足を踏み入れたに違いない。