優しい嘘

はじめてのよる

その夜、咲久のことを初めて抱いた。
女の子の、咲久を抱いた。
同じ家に両親がいるのはわかっていた。でも、互いに止められなかった。
愛しさとか、悔しさとか、不安とか、複雑な気持ちが頭と体を駆け巡って。
俺は、咲久にちゃんと優しくできたかな。

「こう、き…っ」

咲久のナカで緩やかに動けば、咲久は蕩けた表情で俺のことを見てくる。

「や、だめ…きもちいい…」

今だけ、何もかも忘れてほしい。
だって、明日になれば、咲久はまた男のふりをして生きなければならないから。そして、俺と離ればなれになる可能性だってあるのだから。

「ん、あ、あっ、ん…!」

身体を大きく跳ねさせて、咲久は絶頂を迎える。その反動でナカが締まり、俺も薄い膜越しに射精した。
互いに息が荒い。優しく、咲久を包み込む。

「咲久、大丈夫?」
「だいじょうぶ、じゃない…」
「え?」
「好きって気持ちがいっぱい溢れて、すごく苦しい…」

そう言って俺に擦り寄ってくるから、俺は抱き締める腕を強める。
俺だって、君が、咲久が、大好きだよ。
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