元勇者は彼女を寵愛する
「ヴァイス!!!」
家に戻ってきた僕を、転げそうな勢いでリーチェが走って出迎えた。
「ねえねえ!!私なんで家に戻ってきてるの!?教会は!?あの少年は!!?なんでこんな夜になってるの!!?どうゆう事!!?ああ!でもヴァイスが帰ってきて良かったぁ!!」
リーチェは早口で一通り言い終えると、安心した様に僕に抱き着いてきた。
そう混乱するのも当たり前だ。リーチェの記憶は教会の所で途切れているはずだから。
本当は目覚める頃には僕も戻っているつもりだった。だけど、予定外のゴミ処理をしないといけなくなったから、おかげですっかり遅くなってしまった。
僕は少し冷えてしまった彼女の体をギュッと抱き締めた。
「リーチェ、心配させてごめんね。あの教会は裏の組織と繋がっていたんだ。僕に洞窟の探索をさせて、その間に君を誘拐しようと目論んでいたんだ。だけど異変に気付いてすぐ戻ったから何事も無かったよ。ただ、君をあの場に置いておくのは危険だったから、転移魔法で先に家に戻ってもらってたんだ」
「あ……ああ、そういう事だったのね。神聖な教会までそんな事になってたなんて。本当、せっかく魔王がいなくなったっていうのに、この世界の人達は何をしているのよ。はぁ……ああ、もう。せっかくヴァイスが自由に動ける貴重な日だったのにぃ」
リーチェはガックリと肩を落としてしょんぼりしている。彼女には悪いけど、その姿も可愛くて仕方ない。別に僕は彼女の側にいられるなら、島の中でも外でもどちらも変わりはないんだけどね。
「……ねえ、ヴァイス」
「?なんだい?」
いつになく思い詰めた表情で、リーチェは僕を見据えた。