元勇者は彼女を寵愛する
「んっんん!そうね……黒髪ね。ヴァイスにそっくりの黒髪の子なら、きっと綺麗な子になるわ!男の子なら、勇者の素質を持つ黒髪イケメンになってたわね!最高じゃない!!」

 そう言い放ったリーチェのキラキラと光る笑顔が、初めて出会ったあの日の彼女に重なった。

「あ、勇者にはなれないか。聖剣はなくなっちゃったもんね。残念、イケメンは勇者になるための素質で……へ?ヴァイス?」

 リーチェは僕の顔を見た瞬間、目を見開き固まってしまった。
 なぜ彼女がそんな反応を見せたのかは分からない。
 だけどなんだろう……この胸の奥がつっかえる様な感覚は?

「どうしたの?なんで泣いてるの?」

 え……?

 リーチェの言葉を聞いて、僕は目から頬を伝う様に濡れている感覚に気付いた。
 泣いている……?なんで……。
 リーチェはハンカチで僕の涙を拭いてくれているけど、溢れ出す涙は止まらない。
 今までにも、彼女の前で涙を流す事はあった。
 だけどそれは彼女の気を引きたくて……つまり嘘泣きだった。

 だから自分の意思とは関係なく溢れ出るこれは一体なんなんだ?
 リーチェはどんな時に泣いていた?
 悲しい時。悔しい時。嬉しい時――感情が大きく揺さぶられた時――
 
 ああ……そうだ……僕は――


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