王女の選択
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その日は太陽の光でさえ祝福しているかのように輝きに満ち、城の人々もすれ違う度にこれから始まることを思ってか思わず笑みを零さずにはいられないかのように浮き立っていた。
まだ右腕を以前のように動かすことはできなかったが、ある程度の日常生活を送ることができるまで回復し、城内を歩くことをジェラルドに許可されたカーラは行動範囲を少しずつ広げていった。ヴィクトーからジェラルドのためにもう少し我慢するように言われてから、一日でも早く回復できるようにと、部屋の中でできることをコツコツとこなしていた。ジェラルドは忙しいようでなかなか会える時間はなかったが、寝る前には必ずカーラの所に足を運ぶとカーラとの甘い時間を過ごしていた。
「おはようございます。今日はジェラルド様からカーラ様のために特別な日程がご用意されておりますから、起きてくださいまし」
ステラの言葉を聞いた瞬間、カーラはベッドから体を起こし、勢いよく上掛けをめくった。
ステラはあきれた表情でそんなことでは殿方も逃げてしまいますよとぼやいた。
「起きたわよ。どうすればいいのかしら?」
「ジェラルド様がストラウスから取り寄せたドレスがありますので、それをお召ください」
そういうと、侍女が大きな箱を次々と運んできた。
「なんだか大がかりね」
気持ちが高ぶっていくのを何とか抑えながら、カーラは答えた。
箱の中には宴でジェラルドが着ていた正装と同じ色のシルクのドレスが収まっていた。手に馴染むそのシルクと胸元を飾る繊細な刺繡を見て、カーラは息を呑んだ。
「こんな素晴らしいドレス、見たことがないわ」
「さあさあ、ドレスは眺めるものではなく、着るものですよ」
ステラも幾分浮かれた声でカーラを促している。
そのドレスはまるで皮膚の一部のようにカーラの体にぴったりで、その軽さと着心地の良さにカーラは感嘆の溜息をつかずにはいられなかった。カーラが宴の時に着用したドレスよりもっと大胆に背中が見えるようになっていたが、ちょうど傷口が見えないようなデザインとなっていてそれもカーラのために考慮されたのが見受けられた。ステラは宴の時のようにカーラの髪を結いあげると数歩下がったところからカーラの姿を見つめた。
「ジェラルド殿はカーラ様のために最高級のものをご用意したというのが一目瞭然ですね」
「きっとものすごく高いんじゃないかしら。これを着てしまうとドレスが汚れてしまわないか気になって何もできないわ」
「ということはそのドレスを着ていれば、さすがのカーラ様でも剣を持ったり、馬に飛び乗ったりすることは躊躇するということですね」
「ステラ!」
二人は顔を見合わせると笑った。
ジェラルド殿が大広間で首を長くしてお待ちのはずですので、朝食の席に向かってくださいとステラはカーラを即すと、カーラはドレスをたくし上げ、小走りで廊下を駆け抜けた。