王女の選択
「カーラ様!!そんな装いで走るなんてはしたないですよっ!」
ステラが後ろから大きな声で叫んでいたが、カーラは聞こえないふりをして、ジェラルドのもとに駆け付けた。
「ジェラルド!」
階段から見下ろすと、大広間のテーブルの脇には正装のジェラルドが片手を椅子において立ち止まっていた。その立ち姿は遠目から見ても見惚れてしまうほど優雅で人目を惹く顔立ちが今日の正装によって一段と男前に見える。
ステラの言葉を思い出して、駆け出したいのを必死にこらえながらゆっくりと階段を下りていった。ジェラルドは一瞬も見逃したくないとでも言うように瞳をカーラにくぎ付けにしていた。
「おはようございます」
「似合っている」
ありがとうございます・・・こんな素敵なプレゼントは初めてで・・・
うれしさを爆発させないよう慎重に話すカーラを覗き込むと、流れるような所作で手の甲に口づけ視線で召使たちに合図を送った。
「今日は其方にとって忘れられない日にしたい」
「忘れられない日・・・ですか?」
次々と出てくる朝食にカーラは目が点となる。新顔の召使が数人入っているのは知っていたが、昔からいる召使もなんだか身のこなしが今までと違って見える。
食べたことがないような豪華な朝食の後、ジェラルドがカーラの手を取り、最初のサプライズだと耳元でささやいた。
え・・・・?ドレスではなくて?
他に何かあるってこと?
ジェラルドのヒミツの計画が今来ているドレスだと思っていたカーラはびっくりして立ち止まった。
こんなことで驚いていては夕暮れまで持たないぞと笑いを堪えながら言うジェラルドはカーラを城外へと導いた。城門ではなく城の裏手の方に歩いて行くと、突然視界が開き、様々な花が庭園に咲き乱れていた。
「これは・・・」
カーラは言葉を失い、ジェラルドを仰ぎ見た。
「カーラの母上の庭園だっただろう?母上の思いを継ぐためにもこの庭園は必要であろう」
私が大切にしなかったから・・・
「違うだろう。これは庭師の仕事だ。そして庭師に回すだけの資金がなかった。それだけだ」
こめかみにキスすると、気に入ったか?と優しく問いかけた。
カーラは思いの丈をぶつけたるようにジェラルドの胸に飛び込んだ。
カーラが顔を持ち上げ涙をこらえて必死にほほ笑む姿を見て、気に入ってもらえたようだなとジェラルドは嬉しそうに囁いた。そしてカーラの歩みを止めると、次のサプライズだと耳元でささやき、庭の向こう側にある真っ白に塗りなおされたガゼボを指さした。