王女の選択
ガゼボのベンチに一人の男性が座っている。
・・・あれは・・・。
カーラはハッとジェラルドを振り返ると、ジェラルドは静かにうなずいてカーラの背中を押してやった。
ゆっくりとガゼボに近づいていくと、男は・・・ルドルフは足音に気づき振り返った。
とたんにカーラの姿に目を見張ったルドルフはその場に立ちつくした。
「ケガは・・・ケガの具合はどうなんだ」
「もうだいぶ良くなりました。お父様は?」
「私はなんともない」
こんなふうに穏やかに話したことなんて、何年ぶりだろうか。
だいぶ痩せて一回り小さくなってしまった父を見て、言葉では言い表せない痛みを感じた。
話したいこと、聞きたいことはたくさんあるのに言葉がでてこない。何もしゃべらないまま少しの間二人だけの時間を共に過ごした。
「カーラ・・・」
静寂を突き破った言葉は愛情に満ちていた。
「私が憎くて仕方ないだろうが・・・許してもらえないだろうか」
カーラは跪き、泣きじゃくりながらルドルフの膝に抱き着いた。
「お父様を憎むなんて、決して決してありません!!私こそ・・・私が息子じゃないから。私がお父様をきちんと支えられないから・・・」
「カーラ。それは違う」
カーラの声を遮るように言うと、カーラの顔を持ち上げた。
「私はお前を誇りに思う。お前はセルドウィックの王女であり、私のただ一人の娘だ」
ルドルフの眼にはもう憎しみは映し出されていなかった。それだけで十分だった。
カーラは立ち上がると、お母様の庭園を一緒に観て歩きませんかと誘った。
ルドルフは嬉しそうにカーラの誘いに応じ、お互い支え合うようにゆっくりとした歩調で庭園を回った。風に身を任せて緩やかに揺れ動く花達は二人を祝福しているようにも見えた。
「ところでカーラ。お前はジェラルドのことをどう思っておる?」
突然の質問に思わず立ち止まってしまった。