王女の選択
―――なぜ・・・愛していると伝えなかったのかと。
ハッと目を見開きジェラルドを見上げる。
「交渉の時、ルドルフ殿に其方が欲しいと言った。だが思ったのだ。そうではないと。そんなふうにして其方を手に入れたいのではない。だから、協定書から削除した」
ジェラルドはカーラに半歩近づくと、カーラの顎に指を添えた。
カーラの唇はわななき、涙が途切れることなく溢れ出て来た。
「其方の心は誰のものなのだ?」
ジェラルドはカーラの瑞々しい唇に目を落としながら囁く。
「其方の唇は誰のものなのだ?」
ジェラルドは返事を待つことなくその唇を塞いだ。自分のものだと主張するかのような荒々しいキスだったが、カーラはそれがうれしかった。息継ぎさえ許されず、カーラがくたりとジェラルドに寄りかかるまで執拗にカーラの唇を味わった。
必死に呼吸をしながらもゆらりと揺れたカーラの目を覗き込む。
「カーラ・ヴァン・セルドウィック」
カーラの額に自分の額を当て、ジェラルドはつぶやいた。
「其方の心が欲しい。どうしても」
―――もうとっくにあなたのものです。
そう言いたいのに、涙と嗚咽で言葉にならない。
後から後から湧き上がる思いが体の奥底から喉に押し迫り、息ができない。
ただジェラルドをまっすぐに見つめ返し、カーラは繰り返し頷いた。
フッ・・・なら・・・
私の人生をかけて・・・カーラ、其方を守るとここに誓おう。
赤く染めた頬と涙で濡れた眼を見開いたカーラを胸に抱きしめ、ジェラルドは底知れない幸せを実感した。