王女の選択
先ほどは気づかなかったが、長い廊下の壁にはいくつものタペストリーが飾られていて、大きな窓の両脇には金色の房を付けた青藍のカーテンが美しいドレープを描いている。高い天井は緩やかなアーチ型になっていて、そこから吊り下げられたシャンデリアの蠟燭が天井画を浮かび上がらせている。
カーラはただ茫然と洗練された装飾品の数々に目を向けながら、ジェラルドと共に大広間へと入って行った。
「わずかでも良心が残っていてよかったです」
ヴィクトーがあきれた様子で二人を迎えた。
「カーラが怒り狂ったので、来るしかなかった」
「奥方がまともな方で助かりましたね。宰相をはじめみんな呆れていましたよ」
「・・・・」
「カーラ殿がストラウスに入ることをどれだけ恐れていたかわかっていたら、あんな馬鹿な真似はできないと思いますが」
ヴィクトーはチクリとくぎを刺したあと、カーラの前に歩み寄った。
「大丈夫ですか?」
「・・・申し訳ありませんでした」
「いいえ。奥方は何も悪くありませんよ。ジェラルド殿がただ一人で突っ走っていただけですから」
「なっ!?」
ジェラルドが口を挟む前に、ヴィクトーはカーラに尋ねた。
「今も不安ですか?」
「・・・国民は快く迎えてくれて・・・実は少し驚いています。城内の方々も・・・」
周りを見渡し、険悪な視線など感じないのを確認してから、嫌われてはいないように思えますと答えた。