神殺しのクロノスタシスⅣ
結局。

シルナもどきは何も言わず、俺のことなど気にもかけてない風に、さっさと何処かに行ってしまった。

俺は、しばらく立ち尽くしていただろうか。

少ししてから、戻ってきた同僚に声をかけられた。

「…何突っ立ってるの?」

「…」

声をかけられるまで、俺はずっと、自分を見失ったようにぼんやりしていた。

そして、ようやく思いついた言葉は。

「…子供達は?」

「は?」

「あの…下取りして連れて帰ってきた…子供達は何処に…?」

片腕を失い、病にかかり、衰弱しきった子供達は?

「何処にって…。もう処分する方に回したよ。今頃死んでるんじゃない?」

…。

そんなことを…お前、平気な顔で…。

「それがどうかしたの?」

どうかしたの、じゃないだろ…。

命が六人分も消えたというのに…何でそんなに平然としていられるんだ。

「…なんか君、今日変じゃない?」

と、同僚が聞いた。

…ぎく。

「ボーッとしてばっかだし。何?今更罪悪感にでも駆られてるの?」

…それは。

「馬鹿だなぁ。僕達だって、直前に会長に引き抜かれてなかったら、あの子供達と同じ運命を辿ってたんだよ?同情しても仕方ないでしょ」

…!そうなのか。

衝撃の新事実だった。

つまり俺と…この同僚も、もとはあの檻の中にいて。

出荷される予定だったのが、直前にあのシルナもどきに引き抜かれ。

出荷ではなく、この奴隷商会でシルナもどきを補佐する役目を与えられた。

シルナもどきが、俺達を冷たく見下げていた理由が分かった。

俺も同僚も、シルナもどきにとっては奴隷と変わりないのだ。

首輪をつけていないだけで。

自分の部下として働かせ、自分の命令を遵守させる為の奴隷。

最初に、檻の中から六人を選んだとき。あのとき、同僚も言ってたもんな。

商会要員として引き抜くのか、って。

あれはそういう意味だったのだ。

見込みのありそうな奴隷だけを、商会で働かされる為に引き抜いて。

使えなさそうな奴隷は、今日みたいに売り飛ばす。

そういうことだったのか…。

…対等に扱われるどころか、俺達もまた、シルナもどきにとっては、売り物と同じなのだ…。

「それより、真面目に仕事しないと。役立たずだと思われたら僕達も売られるよ」

「…そうか」

そうだな。

だってシルナもどきにとって、俺はあの六人の子供達と変わらないのだから。

利用価値がなくなれば、転売もされる。処分だってされる…。

いくらでも替えの利く、消耗品でしかないから。

…現実の俺も、そうなんだろうか?

俺は、不意にそんな弱気を起こした。
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