神殺しのクロノスタシスⅣ
こうして。

見るもおぞましい、私の人生劇場が始まった。

「まずは、シルナ・エインリーの出身地。彼の生まれ故郷について説明していきましょう」

羽久もどきは、そう言って、ステージの端に移動した。

「彼の生まれ故郷は、イーニシュフェルトの里と呼ばれる秘境です。そこでは、世界で最も進んだ魔導化学を誇り、まさに魔導の最先端知識を持つ一族の生まれでした」

そして。

羽久もどきは、マイクを持ってない方の手で、いつの間にか現れた劇場のスクリーンを指した。

「こちらをご覧ください」

そう言うなり、スクリーンに、恐ろしいものが映し出された。

故郷だ。

イーニシュフェルトの里。

私の故郷の風景が、映し出されていた。

今はもう…私とヴァルシーナちゃん以外、誰も知らないはずの…私の生まれ故郷が。

何で…どうやって、こんな景色を…。

「秘境と言うだけあって、自然の美しい、素晴らしい土地ですね。こんなところに故郷を持つなんて、シルナ・エインリーはとても幸せ者です」

「…!」

…それは。

それは皮肉なのか?羽久…。

「では次に、故郷にいた頃のシルナ・エインリーの様子を見てみましょう」

すぐに、スクリーンの映像が移り変わった。

今度は、イーニシュフェルトの里の賢者が着る、法衣に似た白い衣装を身に着け。

杖を持って、仲間に囲まれている私の姿が映し出された。

「これが、イーニシュフェルトの里時代のシルナ・エインリーです。とても威厳のある、優秀な魔導師の姿ですね」

思わず、息が止まりそうになった。

しかし、構わず羽久もどきは話し続ける。

「実際彼は、里の若い魔導師の中では、群を抜いて優秀だったそうです。子供達からは羨望の的で見られ、同年代の里の魔導師達も彼を深く尊敬していたそうです」

…。

「その証拠に、彼の周りにはたくさんの仲間に囲まれています。皆が彼を慕っていたんですね」

次に映し出された映像は、里の仲間達に囲まれ、楽しそうに談笑している私の姿だった。

かつての私の姿。

こんなときが…私にもあったのだということを、再確認させられる。

「彼はとても優秀な魔導師なので、里の長老達からも、将来を期待されていました。…ご覧ください。シルナ・エインリーは、里の長老達に混じって、様々な魔法を研究していますね」

今度は、私が長老達に混じって、魔導理論の研究をしているところが映し出された。

…無駄に、再現度が高いのが癪に障る。

私の頭の中をトレースしているとでも言うのか?

「こうして彼は、多くの魔法を使えるようになったんですね。これが、後のシルナ・エインリーの魔導師人生を大きく左右することになります」

と、羽久もどきは笑顔で言った。
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