神殺しのクロノスタシスⅣ
「彼は言いました。自分は孤独だったと。依代の子供に会うまで自分はずっと孤独で、辛くて寂しかったと。だからその子と会って、その子を愛してしまったから殺せない、と」

…うん、言ったね。

確かに言ったよ。

「なんと馬鹿げた話でしょう。皆様、そうは思いませんか?」

と、羽久は一人しかいない観客席に向かって語りかけた。

「愛してしまったから?だから何なんでしょうか。そんな下らない、馬鹿げた理由で、シルナ・エインリーは自らの役目を放棄したのです。里の仲間達から託された使命をドブに捨て、人々の命を犠牲にして、私利私欲の為に邪神を守ることにしたのです。…これが、イーニシュフェルトの里の賢者がやることでしょうか」

全く、言い返す言葉が見つからないね。

あまりにも正論過ぎて。

「これでは、死んでいった仲間達は無駄死にです。これは紛れもない裏切りであり、間違いなく故郷の人々は、シルナ・エインリーを憎んでいるに違いありません」

いつの間にか。

目の前のスクリーンが、死んだ里の仲間達の、憎しみのこもった目でこちらを見ている映像に切り替わっていた。

…そうだね。

そんな目で見るだろうね。あなた達は。

「彼の愚かな決断によって、これまで死んでいった人々は報われず、そしてこれからも、多くの犠牲者を出すことになるのです。一人になりたくない、愛する人と一緒にいたい、などという我儘のせいで」

我儘…我儘…か。

本当にね。そう言われても仕方がない。

「それから彼は、自らの私利私欲の為に、ますます悪行を重ねていきます」

スクリーンが切り替わる。

建国当初の、ルーデュニア聖王国の風景が映し出される。

「シルナ・エインリーは、自分と自分の愛した子供…二十音・グラスフィアが生き残る為、彼らが生きやすい居場所を作る為に、ルーデュニア聖王国という一つの国を造り出しました」

そう、それが私の悪行の一つ。

でも、これだけじゃない。

「ルーデュニア聖王国建国の歴史に、シルナ・エインリーの名前は出てきません。しかし、全ては彼が裏から手を回し、王家をけしかけて造らせた国なのです。実質、シルナ・エインリーが支配している国、と言っても過言ではありません」

…。

…私が支配している…は、過言だと思うけどな。

支配している気なんて、毛頭…。

でも、そういう風に見えるのかもね。

死んでいった人にとっては。

「そして彼は、イーニシュフェルト魔導学院という、魔導師養成校を作りました。これこそ、シルナ・エインリーの目的だったのです」

相変わらず大袈裟な口調で、羽久もどきが言った。

「シルナ・エインリーは、この学院に国内の魔導師候補生を集め、言葉巧みに洗脳し、自らの言うことを聞く操り人形に仕立て上げているのです」

…それは、さすがに言い過ぎじゃないかな。

学院を卒業した全ての生徒達が、操り人形になっている訳ではないでしょう…。

異議を申し立てたかったが、観客に過ぎない私には、何も言えない。
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