神殺しのクロノスタシスⅣ
羽久もどきとヴァルシーナちゃんもどきの、謎インタビューは続く。

「だからヴァルシーナさんは、世界を正しい道に戻そうと、行動を続けてるんですよね」

「あぁ、そうだ…。しかし、シルナ・エインリーが、それを尽く邪魔してくる」

あぁ、うん…。

それは申し訳ない…。

「奴には多くの手下がいる。彼らが束になって、私の作戦や計画を妨害するんだ。仲間だった者を洗脳され、奪われたこともある」

「!それは酷いですね」

ナジュ君のことかな?

ナジュ君とは仲間じゃなくて、ただ利害が一致しているから、計画に協力してもらってただけじゃなかったの?

何だか、事実が曲解されている。

そもそもヴァルシーナちゃんは、こんなに素直に自分の敗北を認めないだろう。

「私と志を同じくした同志達は、皆、シルナ・エインリーとその手下達に殺された。理不尽に…」

「なんて酷い…。正しいのはヴァルシーナさんなのに、シルナ・エインリーの理不尽な暴力によって、正義が捻じ伏せられてしまったんですね」

捻じ伏せられたって…。羽久も、捻じ伏せた一人なんだけどな。

ここにいるのは羽久もどきだから、関係ないのか…。

そして。

次にヴァルシーナちゃんもどきが言ったことは、私の心に針を立てた。

「…それに何より、シルナ・エインリーは、私の唯一の理解者だった者を殺したんだ」

…っ。

…それは…。

「ヴァルシーナさんの、唯一の理解者…ですか?」

「そう…。レーヴァテイン。彼女だけは、真に私の味方だった…。孤独に戦うしかない私の、唯一の…。でも、それさえもシルナ・エインリーは奪ったんだ」

…正確には、奪ったのは私ではなく、二十音だけれど。

二十音を止められなかったのは、私の責任だ。

だから、レーヴァテインは間接的に私が殺したも同然だ。

「挙げ句あの男は、手段を選ばず正しい道を貫こうとする私を、嘲り笑ったんだ。何年研鑽しようと自分には届かないと愚弄し、私にとどめを刺すこともなく、私を嘲笑した」

「そんなことが…」

「私は決して、あの男を許さない。シルナ・エインリー…。奴が正しい道を選んでさえいれば、私だって、こんな辛い思いをせずに済んだんだ。あの男が、一族の使命を果たしていれば…。私は、人生を狂わされずに済んだのに」

ヴァルシーナちゃんは、涙声でそう訴えた。

…どうして。

どうしてそんな…私の心を抉るようなことを言うかなぁ…。

効果覿面だよ…。

「そう…。こうしてヴァルシーナさんは、シルナ・エインリーの身勝手によって、人生を狂わされたのです。そして彼のせいで人生を狂わされた人間は、ヴァルシーナさんだけではありません」

羽久もどきは、マイクを自分に戻して、観客席に向かって言った。

「彼によって洗脳された、多くの魔導師もまた、シルナ・エインリーの被害者なのです。ここからは、シルナ・エインリーのせいで、人生を狂わされた人々を紹介していきます」
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