神殺しのクロノスタシスⅣ
「イーニシュフェルトの里の賢者は…特に、古い考えを持った長老達は、自分達こそが世界で最も優れた魔導師でなければならない、と考えていた」

非常に傲慢な考えだ。

だからこそ、研究した魔導理論も独占していたし、研究も全て、里の中だけで内密に行われていた。

今のように、研究した魔導理論を本にして出版する、なんて有り得なかった。

自分達が最も博識でなければ、気が済まなかったのだから。

「でも、イーニシュフェルトの里の外にも、魔法が使える者は…魔導師は存在している」

ジュリス君が、そうだったように。

あの時代、イーニシュフェルトの里の他にも、魔導師はいた。

どの時代でもそうだ。いつでも何処でも、魔導師はいた。

しかし。

「里の賢者達は、外にいる魔導師が鬱陶しかった。いつか自分達に歯向かってくるんじゃないか、いつか自分達の知らない魔法を使ってくるんじゃないか、って気が気じゃなかったんだよ」

私達は魔導師であるが故に、魔導師を恐れていた。

自分達以外の魔導師が、煩わしかったのだ。

そこらにいる、有象無象の魔導師なんて別段怖くはなかったけれど。

それでも、そいつらが徒党を組んで攻め入ってきたら、面倒な事態になる。

だから、賢者の石を作ることにした。

里の外にいる魔導師を、黙らせる為に。

「魔封じの力を持つこの石なら、里の外にいる有象無象の魔導師なんて、簡単に黙らせることが出来ると思っていたんだよ」

まぁ。

ジュリス君みたいな、有象無象ではない一部例外もいるけれど。

…え?

あらゆる魔を封じるなんて、そんな便利な道具があるのなら。

何で、聖戦のときに…邪神を封じる為に使わなかったのか、って?

それも良い質問だ。 

自問自答だけど。

「じ、じゃあ…お前だけは、魔封じの石の抜け道を知ってるって言うのか?魔封じの石を無効化する方法を…」

あ、そういう質問をするのか。

それでも良いよ。答えるべきことは変わらない。

「無効化する方法はない。魔封じの効力が消えることはないよ」

「だ、だったら」

「でも、突破する方法ならある」

だから、私はここに来た。

私達だけが、この異次元世界を抜け出せるから。

「君達『サンクチュアリ』の作戦は、決して悪くなかったんだよ」

と、私は説明した。
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