神殺しのクロノスタシスⅣ
…驚いたかな?

それとも、予測がついてた?

少なくともこの青年は、寝耳に水だったようで。

何も言えずに呆然としている。

うん、本当に申し訳ない。

でも、これが私の…。

狡猾な、イーニシュフェルトの里の生き残りである…シルナ・エインリーのやり方なんだ。

「そういうことにしておけば、いつか、君達みたいな魔導師排斥論者が釣れると思った」

完全に魔法を封じる石。

そんな魔法みたいな力があれば、魔導師排斥論者達は、こぞってその力を求めるだろう?

そして、こんな危険な力を手にしようとする、危険な魔導師排斥論者を野放しにはしておけない。

だから、これは撒き餌なんだ。

「偽の流言で、君達のような過激な魔導師排斥論者を釣る。釣れたところを捕らえる。簡単でしょう?」

「…お、お前…」

「何かな?」

言いたいことがあるなら、何でも聞いてあげるよ。

「お前…俺達を…騙したのか?」

何かと思ったら、そんなつまらないことか。

まぁ良いよ。何でも聞いてあげるつもりだったんだから。

「そうだね、騙したことになるね」

でも。

「先に私達を騙して異次元世界に陥れたのは、そっちでしょう?」

やってることは、私達、どっこいどっこいなんじゃないかな?

吐月君達は、騙されて魔法陣に足を踏み入れたんだし。

「お互い騙してた。これでイーブンだよ」

きっと今、私は。

酷く、残酷な笑みを浮かべているんだろうな。

でも何度も言うように、これがイーニシュフェルトの里の…いや。

私のやり方なんだよ。

「ふ、ふざけるな…ふざけるなぁっ!」

逆上した青年が、小型ナイフを振り上げて襲い掛かってきた。
 
おっと、危ない。

私はすらりと避けて、つんのめって倒れそうになった青年を、逆に支えてあげた。

「大丈夫?」

「っ!馬鹿にするなっ!」

あぁ、ごめんごめん。

「ごめんね、自慢の策を台無しにしちゃって」

「っ…!驕るな!」

それはどうも申し訳ない。

「突破法があったとしても、知っているのは貴様だけだ!他の者は…最初に捕らえた四人は、その突破法を知らないんだろう!」

おっと、そこに気づいたか。

確かに、その通りだね。

「そうだね、彼らは知らないだろう」

教えたことはないし、そもそも賢者の石の存在も知らないだろう。

「だったら、奴らだけでも…」

「それは無駄だよ」

「…!何故だ!」

何故って。

そんなの。

「彼らは皆…あの『人類史上最低の人間であるシルナ・エインリーに才能を見込まれた、優秀な手駒達』なんだから」

こんなちゃちな石ころ一つで、私の見込んだ優秀な手駒…もとい。

仲間達が、止められるはずがないでしょう?
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