神殺しのクロノスタシスⅣ
…あ。

…シルナだ。

俺は思わず、シルナの両肩をガシッ、と掴んでいた。

「えっ、ど、どうしたの?」

「シルナだよな?お前シルナだよな!?」

と、確かめずにはいられなかった。

「え!?し、シルナだけど?」

「俺の知ってるシルナか!?奴隷の出荷とか仕入れとか、下取りとか言わないシルナだよな!?」

「な、何それ怖い!」

「俺の知ってる、アホで間抜けで昼寝好きで、三度の飯よりチョコレートが大好きな、へっぽこ学院長のシルナなんだな!?」

「…物凄く羽久が私に失礼なこと言ってる気がするけど…そのシルナだよ…」

「そうか!それなら安心だ」

「…どういう安心の仕方…?」

こういう安心の仕方だよ。

どうやら、これは本物のシルナのようだな。

「良かった…つまり、俺は戻ってこられたんだな…」

「あ…うん、そういうことになるね」

俺も戻ってきて、シルナも戻ってきた。

それは何よりだ。ひとまずは安心したな。

シルナの言っていた、賢者の石によって作られた異次元世界の突破法は…間違っていなかったという訳だ。

「…羽久も、本物の羽久だよね?」

するとシルナが、そんな変なことを言い始めた。

「何だよ?」

「なんかこう、マイクを持って…レディースアンドジェントルメーン…的なことは言わないよね?アナウンサーみたいにならないよね?」

何言ってんだこいつ?

「おい、頭大丈夫か…?俺がいつ、そんな大道芸みたいなことしたんだよ…」

「え?さっき…」

「それを言うならお前こそ、さっきまで成金みたいな格好して、奴隷の仕分けとかしてないよな…?」

「な、何それ?怖いよ。私がいつそんなことしたの…?」

「…」

「…」

お互い、不審そうにお互いの顔を見て確認する。

成程。

お互い、異次元世界で色々あったらしいな。

まぁ、その話については追々。

「とにかく、俺達はお互いに本物だ」

「うん」

「それだけ分かってれば良いだろ、今は」

「うん。そう…そうだね」

そして、お互い無事に帰ってこられたんだから。

それを良しとしよう。

「…それで、羽久」

「何だよ?」

「賢者の石は?回収した?」

賢者の石?

「いや、異次元世界は壊したけど…。賢者の石は…」

…何処にあるんだ?

「私さっき戻ってきたとき、近くに落ちてたんだよ、ほら」

と、シルナは小さな石の欠片を見せてきた。

こんなちっぽけな石片に、俺達は踊らされてのか。

そう思うと、めちゃくちゃ腹が立つけど…。

今はそれどころじゃないよな。

「そんな、適当に落ちてるものなのか?俺が壊したのは…あっ」

視線の先、窓の近くに。

ポツンと、石の欠片が落っこちている。

あれか。俺のいた異次元世界の賢者の石は。

良かった。さっさとあれを回収して…。

石に向かって走り出そうとした、そのとき。

「…!」

俺でもシルナでもない、別の人物が。

先に、その石の欠片を拾った。
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