神殺しのクロノスタシスⅣ
ありがとう、長々と夢を語ってくれて。

もういーよ。聞き飽きた。

「それはいーね。夢があるね」

「『八千歳』さんは?あなたにも、夢があるんじゃないですか?」

「うん、俺にもあるよ」

素敵な夢。願ったら叶いそうな夢。

「『八千代』がいて、『玉響』もいて…。学院長達と一緒で、ツキナも一緒で…このイーニシュフェルト魔導学院で、人並みみたいな学生生活をする夢」

素敵な夢。

…願っても、決して叶わない夢。

「なら、今まさに叶ってますね」

「叶ってないよ」

「え?」

この夢は、絶対に叶わない。

だって。

「君は死んでるんだよ、『玉響』。ここは君の言う通り『夢の世界』で、現実での君は死体なんだ。墓の下にいるんだよ」

何度俺が、君の墓を参ったと思う?

園芸部で季節の花が咲く度に、君に見せに行ってあげてるじゃん。

俺の自己満足だけどさ。

「え…と?『八千歳』さん、何を…」

「しらばっくれなくていーよ。何を言っても真実は変わらない。『玉響』は死んでるんだ。君が今語った夢は、全部叶わないんだよ」

だって死んだからね。

死人は、夢を語らない。明るい世界を見ることはない。新しい人生をやり直すこともない。

終わったんだから、もう。君の命は。

「君はとっくにあの世に行ってるんだよ。今ここにいる君は、単なる幻影でしかない」

「え、ちょ…何言ってるんですか…?『八千歳』さん…」

「君こそ、何言ってるのさ」

死人の癖に。

「生きてるみたいな顔して、喋らないでくれる?」

これ以上。

俺の記憶にある、『玉響』を穢すな。

「君は死んだ。もう夢を見ることはない。…俺が殺したんだから」

確かに、この手で。

俺が、『玉響』を殺した。その事実に変わりはない。

どれだけ悔いても、消えてしまった命は戻らない。

本当の君は今頃、そのキエルって子と、仲良くあの世にいる運命なんだ。
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