神殺しのクロノスタシスⅣ
…さぁ、どう出る。

しらばっくれるか。それとも、また世界をリセットか?

…すると。

「…僕は、明るい世界を見たかった」

『玉響』はむくりと起きて、立ち上がった。

釣られるように、俺も立ち上がった。

部屋の中は暗くて、『玉響』の顔は見えなかった…。

…けれど。

窓の外から、月の光が差し込んで。

はっきりと、『玉響』の顔を映し出した。

「…それなのに、あなたが僕を殺したんです」

その目には涙が浮かび。

そして、俺に対する憎しみが、ありありと浮かんでいた。

…ようやく認めたね。

自分が死人だってことを。

「僕を騙して殺した。後ろから。寝返ったと見せかけて、僕を殺した卑怯者」

「…」

「僕が見たかった世界を、僕が見れなかった世界を…あなたに奪われた世界を、あなたは今見ている。何でですか?」

「…」

「何であなたなんですか?僕はあなたと違って、人を殺すことに罪の意識を感じていた。あなたのような殺人鬼じゃなかった。それなのに…どうしてあなたが生きて、僕が死ななきゃならないんですか?」

「…さーね」

そんなの…俺が聞きたいよ。

何で、生き残ったのは君じゃなかったんだろうね?

俺が殺したからだね。そーだね。

「人を殺したことに、後悔も反省もしないあなたに…生きてる資格なんかない」

うん。

君の言う通り。

そーだよ。俺は、自分が人を殺したことに、後悔も反省もしてない。

何度同じ場面に戻って、何度同じ選択肢を並べられても。

俺は、同じ選択をするよ。

あのときは、あれが正しいと思ったから。

頭領様に認められたい、なんて…馬鹿なことを考えていたから。

何度あのときに戻っても、俺は君を殺す。

同じ運命を辿る。

そんな人でなしに、確かに生きてる資格なんてないだろーね。

君を殺しておいて、俺だけが生き残るなんて、そんな理不尽…君は許せないだろーね。

だから。

「何て言って責めてもいーよ」

俺は、『玉響』にそう言った。
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