神殺しのクロノスタシスⅣ
「…何故折れない?」

「ん?」

『玉響』が、俺を睨むようにして聞いた。

「お前の心の、一番痛いところを突いているはずだ…。何故、お前は折れない?」

…誰だろ。

『玉響』じゃないよね。

この異次元世界を作ってる人だろうか?

なら、丁度良い。

「返してよ」

もとの世界を。

『玉響』が死んだ世界を。

「こんな嘘っぱちの世界じゃなくて、もとの世界を返せ」

これ以上、『玉響』を穢すな。

「何故だ…!お前達は、罪悪感を感じてるはずだ。その罪悪感に、潰されるはず…!」

あー、何?そーいうこと?

それが目的だった訳?

だから、敢えて俺の一番のコンプレックスをグサグサ刺激してきた訳ね?

良い度胸してるなぁ…。

「そーだね、罪悪感は感じてる」

それは否定しないよ。

でも俺は、後悔してない。反省はしない。

何度同じ選択を迫られても、俺はあのとき、『玉響』を殺してたよ。

「…だけどさ、君は俺達を舐めてるね」

誰だと思ってんのさ、俺も『八千代』も、元『アメノミコト』の暗殺者だよ?

そこらのか弱い少年と、一緒にしないで欲しいね。

自分のやってることは分かってる。自分の罪。過ちを。

「どんな悪態も、罵詈雑言も…地獄の業火に焼かれることも…全部、覚悟してるに決まってんじゃん」

後悔するくらいなら、最初から人を殺したりしてないよ。

そんな生半可な覚悟で、暗殺業なんて出来るはずないでしょ。

だから、俺は後悔しない。反省したり、死者に許しを求めたりはしない。

…え?今『玉響』に謝ってたじゃん、って?

あれはただの自己満足だよ。

「この程度で…俺達を折ることは出来ないよ。残念だったね」

何度やり直しても、何度繰り返しても、俺達は同じことをする。


だって、いつでも、俺達は…。





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