神殺しのクロノスタシスⅣ
これまでも、この家族は酷いと思ってきたが。

本当に酷いのは、その後だった。

「魔導学校でもない大学の受験に失敗するなんて、良い恥晒しだわ。親戚に何て言えば良いの?」

志望校に落ちた、と桜散る報告をしたとき。

母親の第一声がそれだった。

更に。

「魔導師にもなれないのに、大学すらまともなところに行けないのか?お前って奴は本当に…。…はぁ、駄目な奴だな」

父親の第一声は、これだった。

これまで弟を優遇しまくっていたが、露骨に俺を非難することはなかった。

魔導適性がないならないなりに、そこそこ頑張れ、みたいなスタンスだった。

でも、一流大学に落ちた途端この手のひら返しだった。

弟になまじ才能が認められた故に、余計兄が受験失敗したことに落胆したのだろう。

そしてこいつらは、魔導師の学校は知っていても、一般の学校のレベルについては何も知らなかった。

だから、俺が落ちたのは国内最難関の大学であり。

そもそもこの大学を目指せるというだけで、充分めちゃくちゃ賢いという事実も知らなかった。

ただ受験に落ちたという結果だけを見て、俺を罵倒したのだ。

魔導適性があると発覚してから、ずっとちやほやされていた弟までもが、俺を見て馬鹿にしたように笑っていた。

目の前が真っ暗になった俺は、その後の滑り止め大学も、実力を出せずに全滅。

精々、地方にある、所謂Fラン大学と呼ばれる大学に引っ掛かったくらい。

俺は、それだけでも充分じゃん、と思うけど。

両親や弟、親族。果てはクラスメイトや塾の先生にまで散々に馬鹿にされ、失望され、口を開けば「お前にはがっかりした」と言われ。

鮮やかなまでに、転落人生を経験した。

酷い。これはあまりにも酷い。

受験という、たった一度の失敗で…皆が俺に背を向けて、いなくなる。

家族も友人もクラスメイトも教師も。

もうお前に用はないとばかりに、俺を置き去りにしていく。

…そんな人生を、俺は見たことがある。

だから。

だから、余計に腹が立つのだ。

こんなものを俺に見せて、何のつもりなんだよ、って。




「…魔導師なんか、魔法なんか。なくなってしまえば良いんだ」

「…あ?」

ふと声がして、振り向くと。

受験に失敗して、家族に見放された憐れな青年が、そこに立っていた。
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