愚かな男を愛したセリーナ
 馬車であれば一日かかる距離を、セドリックは馬を駆けて半日で移動した。普段は馬に乗ることなどないが、出来ないわけではない。会いたい、早くセリーナに会いたい。その一心で馬を駆ける。

「ここか、セリーナのいる街は」

 夕闇の迫る頃にようやく目的の街にたどり着いたセドリックは、辺りを見回してギルドを探す。魔術師であれば、ギルドに顔を出すはずだ。

 乾いた空気がひやりとする。ギルドと思わしき建物から、二人の人物が出てくる。一人は、セリーナに似た色のローブを着ている。もう一人は背の高い細身の人物で、腰には大振りの剣を腰に帯びていた。二人はにこやかに話しをしている。

「セリーナ!」

 いてもたってもいられず、セドリックは声を張り上げた。

 こちらを向いた女性は、やはり妻のセリーナだった。驚いた顔をして、セドリックを見つめている。口元が動き、「どうして」と呟いた。

「セリーナ! ようやく見つけた!」

 喜び勇んで彼女に近寄るセドリックの動きを、セリーナの隣に立つ美丈夫が止めた。セリーナはその人の陰にかくれるように動いた。

「お前、この手をどけろ。俺はセリーナに会いに来たんだ」
「……」
「セリーナ、俺だ、セドリックだ!」
「やめて」

 消え入りそうな声をだしたセリーナにセドリックは手を伸ばすが、何故か届かない。美丈夫はセドリックに声をかけた。

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