愚かな男を愛したセリーナ
「セドリック、今頃お出ましか」
「誰だお前は! 俺は! 俺は俺の妻のセリーナに会いに来たんだ!」
「……なんで」

 肩を震わせたセリーナは、目の前の人物の背中に縋りついている。その姿を見てセドリックは、彼女を掴もうと手を伸ばしたところで、美丈夫の手が首にあたる。ぽわっとした熱を喉に感じた瞬間に、セドリックはその場に膝をガクンとついた。

「セドリック!」

 セリーナは飛び出してきて、セドリックに近寄るとその背をなでるように手を添えた。

「私の可愛い弟子のセリーナが、こんな男を好きだったなんてね」
「師匠! セドリックに何をしたのですか?」

 セリーナはキッと師匠のミーナを睨んだ。男性と思われた人物は、セリーナの魔術の師匠のミーナだった。

「なに、真実の輪をかけただけだよ。本当のことを言わないと、そいつの首にある輪がもっと締まるからね」

 セドリックの首元に、白く細い輪がかかっている。既に締めているのか、セドリックは顔を苦しそうにしながらミーナを見た。

「セドリック、君はアイラが好きだったんだろう? アイラのお腹の中にいるのは、今隣にいる男の子どもかどうか、わからないよ? 君たちはもう離婚できる。離婚して、アイラの子どもが生まれた後で、揉めた場合に君がアイラを奪うことも、出来ると思うよ」
「カハッ」

 輪はだんだんと締まるのか、セドリックは苦しそうに眉を寄せた。

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