愚かな男を愛したセリーナ
 そう言って手をひらひらと振りながら、ミーナは二人の前から姿を消した。まだ残る痛みに膝をついていたセドリックの背中を、セリーナは優しくなでた。





 痛みの引いたセドリックは、セリーナの方にそっと手を差し伸べると、彼女はその手を両手で握った。いつものように、柔らかく微笑むセリーナがいる。それだけで、セドリックは胸にこみあげてくるものを感じた。

「お、お前に、俺……、謝りたくて」
「うん、セド」
「俺、酷いことをしてしまった」
「うん」
「ごめん」

 必死な目をしたセドリックは、どうにかしてセリーナに想いを伝えようと必死になるが、肝心な言葉が上手く出てこない。焦りから手に汗が流れてしまう。口をぱくぱくと開けたセドリックを見たセリーナが上目遣いになってセドリックに伝える。

「セド、セドのお部屋に行って、話を聞くよ。ここだと、落ち着かないし」
「俺の泊る部屋か? あ、あぁ。宿屋に行こう」

 二人は立ち上がると、宿屋に向かう。一度繋がった手をセドリックは離さなかった。





「セリーナ」

 部屋に入って扉を閉めるなり、セリーナを引き寄せたセドリックは小さな体をギュッと抱きしめた。

「すまなかった、俺がバカだった。セリーナ、お前を失ってから気がついたんだ。お前の存在の大きさを」
「セドリック、それって」
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