愚かな男を愛したセリーナ
 悲壮な顔をしたセリーナの呟きを聞く者はいなかった。





「よぉ、セドリック。一人か? セリーナはどうした?」
「あ? あぁ、セリーナか……」
「なんだ、とうとう別れたのか?」
「……そんなんじゃねぇよ」

 ギルドの仲間に声をかけられたセドリックは、チッと舌打ちをして顔をそむけた。酔った勢いでセリーナを抱いた翌朝から、隣にいるはずの彼女がいない。

 今更ながら、セリーナの存在の大きさを思い知らされる。形だけの夫であるセドリックの世話を、見えないところでしてくれていた。彼女がいないだけで、だんだんと食事はおろか、生活の質が下がっていく。何をしていても思い出す。いつも、隣で穏やかに微笑んでくれて、愛してくれたのはセリーナだった。

 あれだけアイラにこだわっていたのに、あの夜からセリーナの顔しか思い浮かばない。乱れた銀髪をシーツに広げ、恍惚とした表情をして喘いでいた。この手の愛撫を、これでもかと味わうように身体をしならせて達していた。

セリーナは美しかった。美しいことは知っていたが、思い知らされたのだ。あの、自分の楔を突き入れた瞬間に。痛みをこらえながら受け入れた瞬間の彼女は……、まるで女神のように全てを受け入れてくれた。

 ――俺の、バカな劣情も。

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