再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 央太と和解して、彼の手を取ることを決めた日から、どうも涙腺が脆くて困ってしまう。
 
「ありがとう、越川ちゃん」
「ハハハ。もういいって」

 幹太を背後から抱きしめながら首を振る越川と笑い合っていると、扉が開く音がした。
 え、と驚いて振り返ると、そこには神妙な表情をしている央太が立っていたのだ。

「え? 央太さん?」

 時計を確認したが、今はまだ午後二時。帰りは夕方だと聞いていたのに、どうしたのだろうか。
 首を傾げたあと、すぐさまこの状況はマズイのではと青ざめた。
 越川を見ると、彼女も顔を引きつらせている。
 央太と越川は、六年前に会ったっきり。顔を合わせていないはずだ。

 あんなことがあったので、お互いに気まずいだろう。
 慌てて取り繕おうとしたのだが、央太は足早に越川のところまでやってくると、「今日、越川が来るって聞いたから。急いで帰ってきた」と真綾に言ったあと、越川に向かって深々と頭を下げたのだ。

「永江先輩?」
「越川。ありがとう」
「へ?」

 央太が突如としてお礼を言い出したので、越川もそして真綾も驚いて目を丸くさせた。
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