再愛婚～別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています～

　だが、彼の気持ちに応えられない以上、冷たいと言われようがノーを言わなければならない。
　強い口調で彼にお願いをする。

「離して、ノア」
「真綾」
「ここは会社。そして、その件については何度も断っているはず」

　きっぱりと言い切ったのだが、ノアは首を横に振るばかりで真綾を解放しようとはしない。
　
「……無理だ、真綾。僕の心は、ずっと君に向かっているから」
「ノア！」
「ずっと元カレに心を奪われているなんて、そんなの悲しすぎるだろう？　向こうは、真綾のこれまでの苦労を何も知らないなんて！」
「っ！」

　何も言い返せないでいると、ノアはより口調を強める。
　その声に滲み出ているのは、真綾に対する決意と、真綾の元カレに対しての憎悪だ。
　
「絶対に僕はその男を許さない。真綾を守るのは、この僕だ」
「離して、ノア！」

　カップをテーブルに置いてノアから離れようとしたのだが、なかなか離してくれない。　もう一度、彼の名前を呼ぼうとしたとき、頭上で男性の声がした。

「ノアさん、ここにいましたか」

　弾かれるようにノアが離れ、ホッと胸を撫で下ろす。